さてさて、これから塗装に突入していくわけだが、その出来によってまだ見れるくらいにはなるか、悲惨なことになるかが決まるのでちょっと緊張する。
緊張というか不安しかない。
その理由は、それまで見たことすら無かったエアーブラシというものを半年前に初めて触り、訳もわからないまま塗りたくって以来今回が2回目だから。
当然この半年触ってないのだから技術が向上してるはずもなく、それどころか使い方を忘れているかもしれない。
ので、
最低限の使用方法などは教本を読み返して頭に叩き込み、仕事が休みの日に満を持して臨んだ。
まずは練習がてらあまり目立たない小さいパーツのスカーフから始める。
塗料はファレホ。
何故ファレホを選んだのかは今となっては思い出せないが、それ以外持ってないので仕方ない。
今回ファレホをエアーブラシで吹くのに良いという、フローインプルーバーという新兵器を購入したので前よりは上手く吹けることを願う。
ホワイトとエアブラシシンナーとフローインプルーバーを混ぜて吹いていくが、白サーフェイサーの上に薄いホワイトが乗ってるのか全然わからぬ。
とりあえず新兵器のおかげなのか、詰まることもなくやれてはいるので何回か吹き重ねていく。
...と、突然
「シュー」とか「シャー」とか「ブショー」みたいな音が大音量で響き渡った。
家の猫が何かに「シャー」と言っているのかと思ったが猫の姿は見えないので調べてみると、コンプレッサーから伸びるホースに穴が開いていて盛大にエアーが漏れているではないか!
当然予備のホースなど無く、気が動転した私は瞬間接着剤で穴を塞ぐことを試みる。
が、全然ダメ。
げんなりした私は一旦落ち着こうと、ハンモックで寝ていた猫を無理矢理抱き上げようとして、ここでも「シャー」と言われたので泣く泣く諦め、とりあえずコンプレッサーから繋いであるミニエアータンクに残った空気でハンドピースの洗浄を何とか済ませ、すぐにamazonに新品のホースを注文した。
満を持して臨んだエアーブラシが開始から僅か数分で使用不能になるという想定外のアクシデントに一気にやる気をなくしたので、買ってあった「ハンターハンター」の新刊を読み始める。
「ハンターハンター」を読むには、普通の漫画の数倍の時間がかかるというのは全世界共通のことわりで、加えて間があいているので思い出すために前の巻から読むもんだから読了した頃にはかなりの時間が経っていた。
クラピカの聡明で冷静な立ち振る舞いにすっかり感銘を受け、それに倣い冷静に考えた結果、筆塗りでやれるところを先にやろうという結論に至った。
まずはベース。生意気にも木目調にしようと思ってしまったので挑戦してみる。
マホガニーを全体に塗り、その上にライトブラウンを重ね、真鍮ブラシで一方向に擦って細かい木目を入れた。
更にヤスリで擦って綺麗な木目模様を出そうとしたのだが、サーフェイサーのグレー下地が露出してしまいやり直し決定。
紫檀風に方向性を変えることにして、マホガニーを全体に塗って真鍮ブラシで同じように擦り、その上からまた薄めたマホガニーで模様っぽく見えるように刷毛目を残して塗った。
紫檀っぽく見えるような、ただ汚ならしいだけのような...
茶色を使う鞄も一緒に塗る。
ヴァイオレットちゃんの鞄は、ベジタブルタンニンなめしの革なので(私が勝手に決めた設定)味のある風合いを出さなくてはならない。
ので、何色かを塗り重ねていく。
汚ならしいことこの上ない。
一応この上からエアーブラシで色を重ねていくつもりだがうまくいくのだろうか。
やはり靴もベジタブルタンニンなめしの革なので(勝手に決めた設定)同じようにやるつもりだったが、あまりにも汚ならしいので鞄を仕上げて様子を見てからに予定変更。
そして翌日新しいホースが到着。
グルグルしてる人がダメになったので、今度は縞々模様の人にしてみたが、この人のほうが穴が開かなそうには見える。
エアーブラシシステムが復旧したので、さっそく鞄を塗っていく。
薄くフワッとかける感じで微妙に色を変えて吹いたあと、金具と鋲をオールドゴールドで筆塗り。
ステッチも筆でチマチマ塗って、ポリウレタンバーニッシュの半ツヤを数回吹きかけた。
手間をかけてやった割にただの茶色にしか見えないのは、おそらく手間のかけ方の方向性が違うのだろう。
ベースには、ツヤ有りのポリウレタンバーニッシュを何回も吹きかけて、コンパウンドで磨いた。
もうこの際、紫檀に見えるかどうかは無視して、こういう模様のお立ち台ということにする。
それにしても、慣れてないことにはやはりアクシデントが付き物だと思い知った。
ファレホを使う時には容器をよく振って混ぜなくてはならない。
ので、新品のホースの到着を待つ間の筆塗り時、狂ったように振っては塗り、振っては塗りとやっていた。
その結果、‘‘塗る前は振る’’という強迫観念に囚われてしまい、鞄をエアーブラシで塗る時にもつい豪快に振ってしまったのだ。 フタをしてない茶色い塗料が入ったハンドピースを...
当然茶色は宙を舞い、私の顔や腕、道具などにぶちまけられ、イラつくわ掃除は大変だわで、余計な手間と時間を使ってしまい作業が遅々として進まないという当初の不安が的中してしまったのだった。
...続く