カマドウマとのタイマン勝負 第1ラウンド

一般庶民的な大人なら、寒い所に住んでいる人を除いて、一度や二度はゴキブリ的なものとガチのタイマンをしたことがあるだろう。

 

「ジョージ」と喋る例の奴らを除けば、我々とあいつらの体格差は圧倒的な上に、人には文明の利器もあるので、普通にやれば負けることはまずない。

 

が、

奴らを視認した時点で冷静さを保てなくなる人が沢山いるので、大苦戦を強いられるということはよくあることだ。

 

かくいう私も典型的な冷静さを保てなくなる側の人間で、最終的な勝負にはどうにか勝つものの気持ちではいつも負けていると言っていい。

なんとか成敗しても爽快感などまるで無く、ただただホッとするだけ。

手足が縮こまりひっくり返ってる姿すら見るのも嫌で、陰鬱な気分で後片付けをすることになる。

前に一人暮らしの良さについて書き記したが、この時ばかりは本当に困る。

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そもそもあの黒い奴というより、虫全般が苦手なのだ。

私は話が通じない人が苦手で、例えば理屈の通じないゴリゴリの人、日本語の通じない人、こちらの意図とはまるで違う解釈をする人、などなど色々いるが、虫なんて話が通じない人の一番手と言っていいだろう。

 

虫に向かって「悪いんだけど、この部屋から出て行ってもらえないだろうか」

と言って済むなら、

「では水だけ一杯貰えないか」と言われても喜んで差し出すだろう。

そうすればあの人達も死なないわけだし、どんなにいいだろうかと常々思う。

 

 

そんな私の、今まで40数年生きてきた中でのベストバウトともいうべき勝負の話をしよう。

 

対戦相手は、散々話してきたあの黒い奴ではなく、竈馬だ。

 

カマドウマ、別名便所コオロギ。

 

アニメが好きな人なら、『涼宮ハルヒの憂鬱』にも出演していたあいつといえばわかるだろう。

 

実際に戦っている時は、恥ずかしながらその存在を知らなかったのだがあとで調べて判明した。

 

 

たしか深夜2時くらいだったと思う、私はレンタルDVDで何か映画を観ていた。

 

その当時2DKの部屋に住んでいて、テレビの部屋と寝室は襖を取り払ってあって繋がっていたのだが、観ていた映画が無音になった時に何か違和感を感じた。

 

別に何か音がしたとかではなかったから、視聴を続けたが気になって段々映画の内容が頭に入らなくなったので、一時停止して周りを見回してみる。

 

 

暗い寝室の床の上に奴はいた。

 

先に書いたように、その時点で私はカマドウマという人を知らなかった。

 

脚が超長い得体の知れない4cm位の奴が立っているのだ。おそらくこっちを向いて。

その時の驚き、恐怖といったらそれこそ気を失う寸前だった。

 

実際にあの人と対峙したことがあればわかると思うが、ルックス的にはある意味ジョージを超える強烈さ。

無知な私は新種の生き物かと思ったくらいだ。

f:id:guiro16:20180521205401j:imageWikipediaより

 

 

かろうじて失神を免れた私とカマドウマは、しばらくの間2m程の距離で睨み合う。

 

いや、カッコつけずに言う、私は動けなかったのだ。

「一体コイツは何なんだ?」という問いに対して、何らかの答えを出さないことには対処もできぬので、絶対に違うとわかっているのに「デカい蜘蛛だ」と無理矢理断定する。

何しろ恐ろしくて直視出来ないので、その時は正確な形状も把握していなかった。

 

正直コンビニにでも行ってどうにか1時間位時間を潰してくれば、このデカい蜘蛛っぽい人もいなくなるのでは、と思ったが、さすがに奴の影に怯えて生活することを考えると気が狂いそうになったので対決する覚悟を決める。

 

とはいっても、奴がどんな動きをするのかわからないし、ゴキジェット的なものを取りに行くには目を離さなければならないし、そこらにあるもので叩き潰すのは完全にビビってる私にはできそうにない。

 

何も妙案が浮かばず、静まり返った中時間が過ぎていく。

奴も動かない。

 

やはりゴキジェット的なものしかない、奴が動かない今がチャンスなのだと自らを奮い立たせ、静かに立ち上がる。

 

とにかく奴を刺激してはいけないとの一心で、息を殺しかつ目は離さず少しずつ少しずつ後ずさり進む。

 

もの凄い緊張感の中、あと少しで目的地に到達できるというほんの少しの気の緩みが私にあったのだろう、床に置いてある何かを倒してしまった。

 

その瞬間、カマドウマが跳んだ。

 

 

大ジャンプを見て、予期していなかった私は後ろにひっくり返ってしまう。

「ウォッ!」とも「ムオッ!」ともつかぬ声を発して。

 

ひっくり返った音にびっくりしたのか、カマドウマはジャンプを繰り返し、私は「うわぁ」みたいな情け無い声を出し続ける。

 

地獄絵図だ。

 

 

私は余りの衝撃に失禁寸前になりながら思った。

 

 

あんなに跳ぶのか...

 

 

...続く

 

 

 

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